歯無しのお話し

私は、子供の頃に、家の中を走り回って転び、その際に、昔ながらのミシンの鉄製足踏み目がけ
顔面からダイブしてしまいました。

瞬間、物凄い痛みと共に口の中の正面、上下の歯を6本も折ってしまい、急いで歯医者さんに向
かう事になりました。今から、50年も前の出来事です。

これから小学校に入学する寸前の時でしたので、母親が通っていた街中のビル5階に有る、見た目
がホテルの様な、洒落た内装の歯医者さんに連れていかれました。

クラシック音楽が流れていて、高級感漂うフカフカのソファーに、足を伸ばし、奥深く腰掛けて
待っていると、その素敵な雰囲気とは掛け離れた、キイーン・ウィーン・ガガガガ・・という音が
響いて来て、街中だし近くの工事現場の音か何かとでも思っていた記憶が微かに残っています。

しかし、いざ自分が呼ばれて、母親と診察室に入って見ると、未来のテクノロジーが詰まった様
な機械や器具が沢山配置されていて、照明を向けられ、まるで宇宙船のコクピットに座り、自分が
指揮を執る様な錯覚に囚われて、何故か高揚した事も、はっきりと覚えているものです。

そこに、優しそうなロマンスグレイの紳士と、子供特撮番組に出てくる様な恰好いい制服を纏った
女の人達が来ました。ウィーンという静かな振動で、腰かけた自分が、仰向けになり、マスクをした
大人の顔が2つ、視界を遮り、左右から口の中を覗いていました。当然、母親は待合室に戻りました。

先の尖った金属の棒で、歯や歯茎を突いたり、歯の表面から奥に先を滑らせている時に、あ~う~
と声にならない音を発してしまいました。これから何をされるが分からず、不安も有りましたが、子供
ながら、先生や歯科衛生士の人に笑われたく無いので、拳をつくり平静を装い歯を食いしばり・・・
・・・では無く大きな口を開けて、上下の歯全てに、固めのプリンの様な感触で歯型を取られました。

その後、うがいしても歯に付いた残りが取れず、又また尖ったピンセットの様な物で、綺麗に取り除
いてもらった時も、ドキドキして、痛くもないのに力が入っていた事も、初めての経験でした。

当院では、子供治療専用のファミリールーム
が有り、ヒーローのカードや、アニメが映されたり、季節事のイベント等工夫がされており、痛くない
怖くない、また来たくなる。をコンセプトに治療はもちろん、定期的に通って、虫歯にならない様に
予防をする事にも力を入れております。

そして極め付けは、いよいよ本格的な削る治療の、麻酔を注射される瞬間。針の尖端が歯茎に触れ、
覚悟を決めていたものの、いざ刺さると最初のチクリとした痛みのみでした。
後は薬液が出て浸透する感覚も、リアルに伝わって来ましたが、徐々に感覚がマヒして行き、
削る振動は有るものの、あっという間に終了していました。
その後うがい時に口中が痺れて、濯ぎが上手く出来なかったのも、忘れられません。

それからも、小学・中学・高校・大学を経て、社会人となり今日迄には、新車の国産セダン車を、購入出来る位、
歯の治療代に費やしてきましたが、 皆様には、この様な体験をしてほしく有りません。
ですから、日頃から意識して、お口のケアをマメにして頂き、健康な状態を保って下さい。
このブログをご覧頂いている皆様も、自分の歯で、幾つになっても、美味しいものを食べて、
素敵な人生を謳歌して欲しいと思っています。

医療法人 社団 青葉会 えのとでした。