第7回口腔解剖学講座『咀嚼筋』

こんにちは、歯科医師、関です。
3月になり、気温が暖かくなるとともに花粉の猛威を感じるこの頃ですね。僕は重度の花粉症なので、この時期がとてもつらいです。今年こそ減感作療法を始めようかなと思っています。

さて、今回のテーマは、前回の顎関節の構造に引き続き、顎の動きに関するテーマです。今回は、顎を動かす筋肉である『咀嚼筋』についてお伝えしていきたいと思います。

咀嚼筋は、食べ物を咬むときに働く筋肉であり、主に下顎骨を挙上(口を閉じる)する運動を担います。咀嚼筋には、一般に、咬筋・側頭筋・外側翼突筋・内側翼突筋の4つが挙げられます。

①咬筋
・起始(筋の付着のうち、近位もしくは筋運動時に固定している側)
浅部:頬骨弓の前部~中部
深部:頬骨弓の中部~後部
・停止(筋の付着のうち、遠位もしくは筋運動時に動いている側)
下顎骨咬筋粗面
・作用
下顎骨の挙上
・支配神経
下顎神経の枝、咬筋神経

咬筋は、咀嚼筋の中で最も咬合力を発揮する筋肉です。単純に口を閉じる動きをします。咬み込んだ時に顎の外側を触ると咬筋が盛り上がるのが容易に分かるはずです。また、咬筋は、下顎骨の発達にも関与し、咬筋が発達している人は顎もしっかりした四角い顔の人が多いです。

②側頭筋
・起始
側頭鱗、側頭筋膜深葉内面
・停止
下顎骨筋突起
・作用
前・中部:下顎骨の挙上
後部:下顎骨を後方に引く
・支配神経
下顎神経の枝、深側頭神経

側頭筋は頭の横に広がる筋肉で、咀嚼筋の中で1番大きな筋肉です。こめかみを触って咬み込むと、側頭筋が動くのが分かると思います。側頭筋は顎関節の後上方に位置するため、口を閉じる働きとともに顎を後方に引く働きを担います。

③外側翼突筋
・起始
上頭:蝶形骨大翼の側頭下面、側頭下稜
下頭:蝶形骨翼状突起外側板外面、上顎結節
・停止
上頭:関節包、関節円板
下頭:下顎骨関節突起の翼突筋窩
・作用
上頭:下顎骨の下制、関節円板を前方に引く
下頭:下顎骨の挙上
片側では下顎骨を側方に動かす
・支配神経
下顎神経の枝、外側翼突筋神経

外側翼突筋と内側翼突筋は、咬筋、側頭筋と異なり顎の内側に位置するため、体表から触知することはできません。外側翼突筋は、咀嚼筋の中で唯一開口時に機能します。上頭と下頭で機能が正反対で、上頭は関節円板に停止するため、関節円板を引くことで開口するように働き、下頭は他の咀嚼筋と同様に閉口時に働きます。

④内側翼突筋
・起始
蝶形骨翼状突起翼突窩
・停止
下顎骨内面の翼突筋粗面
・作用
下顎骨の挙上、下顎骨を前方に引く
片側では下顎骨を側方に動かす
・支配神経
下顎神経の枝、内側翼突筋神経

内側翼突筋も、顎の内側に位置するため、体表から触知できませんが、口腔内からはその前縁を触ることができます。口を閉じる作用と共に顎を前方に出す作用を担います。