根の治療の洗浄について

みなさん、こんにちは。かさはら歯科医院、歯科医師の岩谷です。

冷気が一段と深まり冬の訪れを感じる今日このごろ、お変わりなくお過ごしでしょうか。

本日は根の治療における洗浄についてお話をいたします。

根の治療は、神経のお部屋の中の感染源を取り除いてキレイにする作業です。ドリルの様な器具で、神経のお部屋の壁を削ってキレイにしていくのですが、それだけでは除去できない細菌や神経組織、器具操作で発生した削りカスなどを取り除くために洗浄を行います。

洗浄液に求められる役割は以下の通りです。

1)抗菌作用

2)組織溶解性

3)スメア層の除去

4)低い細胞毒性

 

1)抗菌作用は細菌を除去する能力のことです

2)組織溶解性は、神経のお部屋の中に残った神経組織を溶かす作用のことです。

3)スメア層の除去は、器具操作で発生した削りカスを取り除く能力のことです。

4)低い細胞毒性は、洗浄液の有害性を示しています。洗浄液は、細菌を除去する能力がある反面、体にとって有害な作用も併せ持っています。薬液によって体に有害な作用をもたらさないことが重要です。

洗浄液は一般的には以下の2種類のものが用いられます。

・NaOCl

・EDTA

NaOClは、1)抗菌作用と2)組織溶解性の効果が大きいです。

一方、EDTAは3)スメア層除去の効果が大きいです。

4)細胞毒性について、NaOClに細胞毒性が存在しますが、これは濃度に依存します。0.5%以下だと細胞毒性は有意に低いですが、その濃度だと組織溶解性の効果が得られません。細胞毒性は、2から8%で変化がないと言われています。組織溶解性は、2.5%から5.25%で効果が現れると言われており、抗菌性は0.5から5.25%で効果が現れるという報告があります。

まとめると、

・抗菌性→0.5-5.25%

・組織溶解性→2.5-5.25%

・細胞毒性→0.5%以下で有意に低い、2-8%で変化なし

以上より、2.5から5.25%の濃度が、上述した効果を踏まえると適切な濃度であると考えられます。また、NaOClの効果は時間と共に減少してしまうため、新しい薬液をたくさん使う必要があると言えます。

NaOClとEDTAは、交互に使用すると効果が高いと言われています。歯の削りカスが歯の表面の象牙細管と呼ばれる孔を塞いでしまうと、NaOClの作用を低下させたり、削りカスの中にも細菌が存在する場合もあるため、EDTAにてこの削片を除去してからNaOClを使用することで、より大きな洗浄効果が得られると言えます。

本日は、根の治療の洗浄についてお話をしました。

ここまで読んでいただきありがとうございました。