歯周病とアルツハイマー

こんにちは、歯科衛生士の和田です。

以前に認知症と歯周病の関係が指摘されていることについて少し書きました。
その時は歯周病菌の毒素がアルツハイマー病の患者の脳から検出される、というデータに基づく話でしたが、今回はもっと具体的な理由も書いておきたいと思います。

歯周病が進行するということは『噛めない』ということに繋がっていきます。
入れ歯を作れば問題ないのでは?と思われるのかも知れませんが、天然の歯に比べると噛む力が2〜3割にも満たないというので『無いよりは良い』という程度でしょう。
ごく稀に「この入れ歯はぴったりで、なんでも噛めるから苦労したことなんてないよ!」とおっしゃる方もいますが、本当にごく稀な場合です。

顎は頭蓋骨に繋がっていますので、よく噛むということが脳への刺激になります。
この脳への刺激が少なくなることが、やはり認知症の発症リスクを高める可能性があるようです。

日本の65歳以上の4425人を4年間追跡した結果、自分の歯が20本以上ある人と比べると、歯がほとんどなく入れ歯も使っていない人は、認知症の発症リスクが平均1.85倍にも高まるのだそうです。

また、アメリカで75歳から98歳までのシスター114人を14年間追跡した研究データもあります。
こちらも自分の歯が9本以下の人は、10本以上の人と比べて平均2.2倍もアルツハイマー病になりやすかったとのことになり、残っている歯の数が少ないほどアルツハイマーのリスクが高いという結果が示されたそうです。

脳への刺激の減少だけでなく、食事の内容が制限されることも拍車を掛けている可能性があります。
当然ですが、何でもバランス良く食事が出来ていた時と比べると栄養の不足や偏りが起きるため、脳や身体の機能低下に繋がるということです。

また、口の中や身体の機能が低下すると、社会的ネットワーク…つまり人との繋がり乏しくなったり避けるようになることも考えられます。
75歳以上の健康な高齢者1203人を社会的ネットワークが充分なグループ、そうでないグループに分けた場合の調査があります。
これによれば、社会的ネットワークが充分なグループと比べて、それが乏しいグループでは認知症の発生率が約8倍に上ったそうです。

歯があることによる「噛める」「話せる」「楽しめる」は、脳の活性化には欠かせないものかも知れません。
元気に長生きするためには歯が大切、と頭の片隅にでも置いていただければ幸いです。

(参考書籍: 森永宏紀先生『全ての病気は「口の中」から!』)