歯周病予防

歯科医師の勝海です。今回は唾液と歯周病予防について説明させて頂きます。口の中で分泌される唾液は、歯周病や虫歯、口臭のみならず、全身の様々な病気と深くかかわっています。唾液の主な役割には、抗菌作用、ph調整作用、洗浄作用、溶解作用等があります。唾液にはラクトフェリンという糖たんぱく質が含まれており、歯周病菌やウイルス等の悪玉菌を退ける優れた抗菌作用があります。そのため、唾液がふんだんに分泌されると、歯周病菌の増殖が抑えられるのです。次に、唾液の分泌量が増えると口の中が潤い、酸性に傾きがちなphを中性に戻す調整作用が働きます。phが酸性に傾くのがいけないのは、口内の悪玉菌が酸性を好むからです。また、口内が酸性のまま放置されると、歯が溶けて虫歯になるので注意しなければなりません。ちなみに、唾液のph調整作用は、水に比べて約100倍から10万倍も強い事が言われています。さらに、唾液が十分に分泌されると、口の中の食べかすや口臭の原因となる細菌を洗い流す洗浄作用が働きます。唾液は、口臭を予防するうえでとても重要なものです。ドライマウス(口腔乾燥症)が、口臭の重大な原因であることは皆さんもご存じかと思います。口の中が乾燥すると、特定の細菌が揮発性硫黄化合物を酸性し、それが口臭のもとになるのです。唾液が分泌されて口の中に行き渡ると、唾液に含まれる酵素の働きで、特定の細菌が揮発性硫黄化合物を発しなくなり、口臭が抑えられます。また、口の中が唾液で潤っていると、入れ歯が歯ぐきにしっかりとくっつき、とても安定しやすくなるのも利点でしょう。このように、天然の唾液には悪玉菌を抗菌したり、歯のphを中和したり、口内を洗浄したりする働きがあることから大変重要であることが分かります。また、口の中に唾液を含ませたまま歯ブラシとデンタルフロスだけで歯磨きをしたほうが、口腔ケアに有効だそうです。市販の歯磨き粉を使ったほうがよく磨けたような気がするのは、人工界面活性剤のラウリル酸ナトリウムが含まれていて泡立ちがよく、歯がツルツルになるからです。しかし、歯のツルツル感にごまかされて、たいてい磨き方が雑になり、歯と歯の隙間や歯周ポケット(歯と歯ぐきの境目)に歯垢が残りやすくなります。そのうえ、歯磨き粉とともに大切な唾液を吐き出してしまうので、殺菌作用やph調整作用も十分に得られなくなります。唾液は様々な形で私達の健康をそれらの働きで守っています。