みなさんこんにちは、歯科医師、関です。
9月に入って台風が多く、今年は梅雨の時期より今の方が雨の日が多いですね。
さて、今回、インプラント解剖学第3回のテーマは『オステオインテグレーション』についてです。
インプラントはなぜ顎の骨にくっつくのでしょうか?その秘密がオステオインテグレーションになります。
今回は、いかにしてインプラントが骨の中に維持されるかについてお伝えしたいと思います。
○オステオインテグレーションとは?
オステオインテグレーションとは、歯科用インプラントが顎骨にしっかり結合している状態を言い、ギリシャ語で骨を意味するosteonと英語で統合を意味するintegrationからなる造語です。
オステオインテグレーションの発見は偶然でした。1952年にスウェーデンの医学教授であるブローネマルクが、微小血流の観察実験のためにウサギの脛骨にチタン製の生体顕微鏡を取り付け、実験後にその器具を外そうとしたところ、骨と結合し外れなくなったことから発見されました。
ブローネマルクはオステオインテグレーションを、光学顕微鏡において、インプラントが生活を営む骨組織と少しの軟組織の介在もなく接触し、その状態が持続していることと定義しました。
難しい言い方ですが、要するに、生きている骨に異物であるインプラントが直接接していて、それが安定しているということです。
○なぜオステオインテグレーションする?
オステオインテグレーションの意味は分かったと思いますが、ではなぜ、異物であるインプラントが顎の骨にくっつくのでしょうか。
まず、インプラントというのは骨の中に埋め込まれたその直後にオステオインテグレーションするわけではありません。インプラントを埋め込むためには、骨にインプラントが埋め込まれるために丁度良い大きさの穴を開ける必要があります。骨の中に穴を開けるわけなので、言うなればそこは傷口であり、穴の周囲の骨は破壊されている状態です。そのためインプラント埋入直後の傷を負ったインプラント周囲の骨は、一度溶かされなくなります。その後、新しく骨がインプラント表面に直接隙間なく作られていきオステオインテグレーションが完成します。この時、異物であるインプラントの表面に何の拒絶反応もなく細胞が侵入し骨が再生されていくことが要になります。
○インプラントは生体親和性?
そもそも、骨組織はインプラントに使われるチタン以外にも案外色んな材料と結合することがわかっています。
そこで重要になるのが生体親和性という言葉です。インプラントや縫合糸、人工弁などヒトの生体に直接接触させる材料のことを生体材料と言いますが、その中の分類の1つに生体親和性材料があります。
⑴生体許容性材料…不導体被膜を形成するため、生体材料として使用されるがアレルギーの危険がある。
ステンレススチール、コバルトクロム、パラジウムなど
⑵生体親和性材料…物質的に安定性が高く生体親和性が高い。アレルギーの心配がほとんどない。骨と直接接触し機械的に結合する。
チタン、セラミック、ジルコニア、アルミナ、カーボンなど
⑶生体活性材料…生体組織と反応し、骨と化学的に結合する。
生体ガラス、ハイドロキシアパタイト(HA)、第3リン酸カルシウム(βTCP)、第4リン酸カルシウム(4CP)など
生体材料は大きく分けて以上の3つに分類されます。インプラントに用いられるチタンは⑵の生体親和性材料です。チタンは生体親和性が高いため、骨に埋め込まれても拒絶反応なくオステオインテグレーションするわけです。⑵や⑶に該当するセラミックやジルコニア、生体ガラス、HAも骨に結合することは分かっていますが、物性の問題から現在はチタン製のインプラントが主流になっています。