第四回口腔解剖学講座『口腔粘膜』

こんにちは、歯科医師の関です。
最近どんどん寒くなってきましたね。体調を崩したり、風邪をひいたりしていないでしょうか?僕は、今年は珍しくさほど体調を崩さず一年を終えられそうです。

さて、今回第四回目の口腔解剖学講座のテーマは『口腔粘膜』です。
今更ですが、お口の中の空間のことを医学的に口腔(こうくう)と言います。そして、今回は口腔の粘膜組織についてお伝えしていきたいと思います。
まず、粘膜とは、消化器・呼吸器・泌尿器・生殖器などの内臓の内壁を覆う上皮を指し、粘膜は常に粘液で濡れています。お口の中も消化器の一部で濡れているので、当てはまりますね。

①口唇(こうしん)
口唇は口腔の入り口に位置します。上唇と下唇の上下に分かれており、そのつなぎ目を口角、上唇・下唇でつくられる口腔の入り口を口裂と言います。上唇と下唇はそれぞれ、上唇小体、下唇小帯という襞が口腔内につながっています。
口唇は食事の際に口腔から食物が出ないようにする役割を担うとともに、発音の調整や表情の形成など様々な役割があります。
口唇にみられる疾患としては、先天異常の口唇裂、ウイルス疾患の口唇ヘルペス、唾液腺疾患の粘液嚢胞などがあります。

②口蓋
口腔の上壁の部分を口蓋と言い、口蓋により口腔と鼻腔は隔てられています。骨に裏打ちされた前半分の硬い部分の硬口蓋、裏打ちのない軟らかい後ろ半分の軟口蓋に分けられます。
硬口蓋の正中には口蓋縫線と呼ばれる隆起した線があり、その前端には切歯乳頭と呼ばれる米粒大の隆起があります。切歯乳頭の周りには何本かのヒダがみられ、それらは口蓋ヒダと呼ばれます。
軟口蓋は硬口蓋と異なり、軟らかく動かすことができます。その後方には口蓋垂、いわゆる‘のどちんこ’がみられ、口蓋咽頭弓により咽頭につながっています。軟口蓋は上方に挙上することで鼻咽腔を閉鎖し、嚥下の際に食物が鼻腔に侵入するのを防いだり、発音の際に鼻腔に漏れる空気の量を調整したりします。
口蓋にみられる疾患としては、先天異常の口蓋裂、ウイルス疾患のヘルパンギーナなどがあります。

③頬粘膜
頬粘膜は口腔の左右両壁に位置し、軟らかく可動性です。耳下腺と呼ばれる一番大きな唾液腺が開口しています。歯ぎしりをする人は、頬粘膜に歯の圧痕できることが多いです。
頬粘膜にみられる疾患として、扁平苔癬、カンジダ症、天疱瘡、麻疹のコプリック斑、白板症など様々あります。

④口腔底
口腔の下底を口腔底と言います。口腔底の大部分は舌(舌については次回、第五回でお伝えしていきたいと思います)が占め、その下の粘膜は帯状の筋肉に裏打ちされ、さらにその下には、太い血管やリンパ組織がみられます。そのため、治療中に口腔底を損傷すると大変なことになります。また、口腔底には舌下腺、顎下腺の二つの大きな唾液腺が開口します。
口腔底にみられる疾患として、口腔底癌、唾液腺疾患のガマ腫などがあります。