歯科金属アレルギーについて

こんにちは。歯科医師の角田です。
本日は歯科金属アレルギーについてお話させて頂きます。

通常、金属アレルギーの原因としては、ピアスや時計などのアクセサリー類が主に考えられます。しかし最近では、歯科用の金属材料が生体に及ぼす影響が重く考えられています。歯科金属アレルギーとは、詰め物や被せ物など、歯科での治療に使用される金属の関与が疑われる金属アレルギーの総称です。

症状として、口腔内では金属と口腔粘膜との接触部に起こる接触皮膚炎や粘膜炎が挙げられます。また、口腔から離れた場所、手の平や足の裏にも湿疹や水膨れが起こり得ます。

歯科金属アレルギーが発症するメカニズムに関しては、多くの研究施設で研究は進められていますが、未だに不明な点は多いです。ただ、歯科用金属材料には、合金として他種類の金属が用いられており、それぞれのイオン化傾向が異なる為に、口腔内で金属がイオン化して体内に取り込まれ易いという事。また、口腔内には唾液、血液、食物残渣など金属の溶出を促す因子が存在する為に、歯科用材料が金属アレルギーを起こしやすいという事が考えられています。

金属は歯科治療に欠かせない材料でもあると同時に、金属アレルギーを起こすリスクをも併せ持っています。例えば、歯科用材料に金銀パラジウム合金という金属を用いる事があります。これは主にインレーやクラウンに用いられる金属です。合金の組成は金12%、パラジウム20%、とJIS規格に定められていますが、その他にも銀や銅、インジウムなどをメーカーにより異なる組成で加えられます。この様に多種に渡る金属を含んだ合金は、イオン化傾向の差によって溶け出し、体内に取り込まれてアレルギーを発症する可能性がある事は先にお話しさせて頂きました。

金銀パラジウム合金は保険治療が効く為に、歯科材料では最もメジャーに使われる材料の1つです。結果として、安価で修復用の材料を用いる場合には、金銀パラジウム合金を用いる事が多くなると考えられます。つまり、金属アレルギーを避ける為に金銀パラジウム合金を使用せずに歯冠修復を行う場合、治療費がより多くかかってしまうと考えられます。

金属アレルギーを防ぐ手段としては、2つの方法が考えられます。1つは、治療の事前に患者さんに対して金属アレルギーのテストを行う方法、そしてもう1つが金属材料を使わない歯科治療をする方法です。
前者の事前の金属アレルギーテストに関しては、患者さん個人にアレルギーテストを強制させる事は時間的、費用的にも難しい為に、実現は難しいと考えられます。その為、現実的には後者の金属材料を使わない歯科治療を行う事が金属アレルギーを防ぐ手段として重要であると考えられます。しかし後者も、材料によっては安価で治療に望む事は難しいのが現状です。

しかし近年では、様々な非金属材料が保険診療で使用可能になって来ています。例えば、2014年での診療報酬改定では、小臼歯部でCAD/CAM冠と呼ばれる金属を用いない白い被せ物が保険導入されました。今後、保健治療が可能な材料にセラミックなどの他の非金属材料が認められる事があれば、金属に代わり積極的に非金属材料を用いる事も可能となると思われます。