第1回口腔解剖学講座『歯の構造』

こんにちは、歯科医師の関です。
僕のほうからは、自身の勉強を含めて口腔の解剖学についてお伝えしていきたいと思います。ということで第1回口腔解剖学講座は『歯の構造』についてです。

みなさん、お口の中に歯は生えているかと思いますが、それがどのような構造をしているかご存知ですか?あまり気にはならないですかね…
ですが、少しでもお口の中に興味を持つことこそが、お口の中の健康を保つ第一歩だと思っています。

歯は構造から主に、エナメル質、象牙質、歯髄、セメント質に分けられます。

①エナメル質
歯冠部を覆う、歯の表層の組織。つまり、お口の中を覗いて見える歯の表面の構造です。
透明感のある白色を呈し、歯を外来刺激から防ぐような役割をしています。
実はこのエナメル質、人体の中で一番硬い構造物なんです!エナメル質の97%はハイドロキシアパタイトというリン酸カルシウムの一種でできており、ほとんど無機質でできています。
しかし、エナメル質は意外とデリケートで、酸によって溶けてしまうのです。ご存知の人もいるかと思いますが、虫歯ができるのもこの性質のせいですね。ただ、エナメル質には、再石灰化という驚くべき性質もあり、唾液中のカルシウムやリン、歯磨き粉などに含まれるフッ素を取り込み、少し溶けただけなら、再び硬く戻ることができるのです。

②象牙質
象牙質は、歯冠部ではエナメル質と歯髄、歯根部ではセメント質と歯髄の間に位置する歯の大部分を占める組織です。黄褐色をしており、エナメル質に比べ軟らかく、硬度は骨と同等です。硬さはエナメル質に劣りますが、弾力性があり咬み合わせの刺激により脆いエナメル質が破折するのを防ぐ役割をしています。
エナメル質よりも軟らかいため、虫歯が象牙質に達すると急速に進んでしまうことが多いです。また、象牙質には象牙細管と呼ばれる無数の細い管があいており、これは歯髄と繋がっています。そのため、虫歯が象牙質に達すると痛みを感じやすく、象牙質に達する虫歯を治療する際は麻酔が必要になってきます。

③歯髄
‘歯の神経’とよく言われる部分です。歯の構造の中で唯一の軟組織で、象牙質に囲まれた歯髄腔に存在し、歯の中心に位置します。
歯髄に分布する神経は、痛みを知覚する神経のみで、熱い冷たいなどの刺激も全て痛みとして感じます。
歯髄は、厳密には神経だけでなく血管組織やリンパ組織、その他多種多様な細胞成分からなり、歯の栄養供給と免疫機能も担います。そのため、歯の神経を抜く、すなわち歯髄を除去すると、知覚がなくなるだけでなく、歯は脆く弱くなってしまうといわれています。ただし、虫歯などによりズキズキ痛くなってしまうほど歯髄が炎症状態になってしまうと歯髄は元の状態には戻ることができないため、神経を抜くことが必要となるのです。

④セメント質
歯根と呼ばれる歯の根っこの部分の表面を薄く覆う組織です。硬さは象牙質よりも少し軟らかい程度です。歯根膜と呼ばれる線維で骨と繋がっており、歯と顎の骨を繋ぎとめる役割を担っています。
普段、歯茎の中に埋もれているセメント質ですが、歯周病などにより歯茎が下がり歯根が露出すると、見えてきます。セメント質もやはりエナメル質に比べ弱いため、虫歯になりやすいです。また、露出したセメント質は傷ついたり剥がれたりしやすく、その下の象牙質がむき出しになると知覚過敏が起こりやすくなります。